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肝細胞がんとは?

肝臓を構成する細胞の1つである肝細胞が悪性化しておこるがんです。
 日本では肝細胞がん患者さんの68%がC型肝炎ウイルスに感染しているという報告1)があり、C型肝炎ウイルスによるC型慢性肝炎、C型肝硬変では、肝細胞がんが発生しやすい(危険因子)といわれています2) 。
C型慢性肝炎、C型肝硬変以外の危険因子には、B型慢性肝炎、B型肝硬変、男性、高齢、アルコール摂取などがあげられています2)。
 現在、肝細胞がんには手術(肝切除)以外にもさまざまな治療法が開発されており、肝細胞がんの個数や大きさ、肝臓の状態に応じた治療がおこなわれます。しかしながら、治療後に再び肝細胞がんが発見されること(再発)が多く、年間再発率は15~20%、5年で80%に達するといわれています2) 。
 そのため、再発を早く発見し、効果の高い(根治的)治療を受ける機会を逸しないためにも、定期的な検査が重要です。

肝細胞がんの危険因子

肝臓内で起こる肝細胞がんの再発には、以下の3種類があります。


再発肝細胞がんの種類

肝細胞がんの再発予防と治療

 肝細胞がんの治療後には、肝機能の改善と肝細胞がんの再発を予防するために行う治療(再発予防)と新たにみつかった肝細胞がん(再発)に行う治療とがあります。

肝細胞がんに対して手術(肝切除)やラジオ波熱凝固療法(RFA)などによる根治的治療をおこなった後、肝細胞がんの再発を予防するための治療には以下のようなものがあります。  患者さんの状態に応じて治療法は異なりますので、担当の先生の指示に従ってください。


 肝炎ウイルスの感染が肝細胞がんの発生に関係しているため、肝炎ウイルスを排除できれば、再発を抑制できるといわれています。

 インターフェロンは、ウイルスに感染したときに体内でつくられるたんぱく質で、医療用に作られたインターフェ
   ロン製剤があります。
 インターフェロン製剤には、肝炎ウイルスを排除する作用に加えて直接的な抗腫瘍作用もあり、特にC型肝炎ウイルス
   に感染してる患者さんの肝細胞がん再発を予防するために用いられます。

   C型肝炎ウィルスの増殖において必須となる蛋白質の活性を直接阻害する新しい薬剤が開発されており直接作用型抗
   ウィルス剤と呼ばれています。
   いくつかのものはインターフェロンと併用されていますが、インターフェロンを用いずこれらの薬剤を複数組み合わせて
   治療することにより副作用が少なく高い治療効果を得ることができるようになっています。

 DNA(核酸)の合成に必要な物質に類似する構造をもつものを核酸アナログとよびます。
 B型肝炎ウイルスが増殖するために行うDNAの合成を邪魔する作用をもつ核酸アナログ製剤があり、B型肝炎ウイル
   スに感染している患者さんの肝機能の改善と肝細胞がんの再発を予防するために用いられます。


肝臓の炎症は肝細胞を傷つけ、肝炎が持続すると肝細胞がんの発生する可能性がより高い肝硬変へと進行させてしまいます。
肝臓の炎症を抑え、肝臓の機能を保つことは、肝細胞がんの再発を抑制するだけでなく、再発した肝細胞がんに対してより効果的な治療を行うためにも重要です。

 グリチルリチン酸製剤やウルソデオキコール酸製剤などの肝庇護薬には、肝臓の炎症を抑える作用があり、肝細胞がんの
   再発予防に用いられます。
 分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤にも、肝臓の機能を維持し、発癌を促進すると考えられているインスリン抵抗性を改善
   することにより再発を抑制することが期待されています。

 肝臓に鉄分が溜まりすぎると肝細胞が傷害をうけやすくなるといわれているため、肝臓に溜まった鉄分を減少させる瀉血
   療法も行われることがあります。


瀉血(しゃけつ)療法

肝細胞がんに対する治療法は、肝細胞がんの大きさと個数、肝臓の障害度に応じて選択されます。日本では、以下のような選択基準(肝細胞がん治療アルゴリズム)があります4) 。
 再発した肝細胞がんでも、選択基準を参考に、前の肝細胞がんよりもより性質が悪いがんである可能性や、前の肝細胞がんを治療した際の影響など、患者さんの状態を考慮して治療法が決定されます


再発した肝細胞がんに対する治療


肝細胞がんの治療法

肝細胞がんの治療法には、手術(肝切除)、[穿刺]局所療法、肝動脈カテーテル療法(肝動脈塞栓療法、肝動注化学療法など)、分子標的治療薬などの抗がん剤による化学療法があります。
 これらの中から、肝細胞がんの大きさや個数などにより、適切な治療法が選択され、必要に応じて組み合わされます。
 肝移植、定位放射線療法や重粒子線や陽子線を用いる放射線療法、緩和ケアが行われる場合もあります。
 主な治療法の効果の高さ(根治性)と身体的負担は、表の通りです。

主な肝細胞がん治療法の根治性と身体的負担

お腹を切って開き(開腹)、肝細胞がんと肝細胞がんが転移している可能性がある範囲を含めて切除(系統的切除)することが基本とされています。  肝細胞がんの位置、浸潤の有無、個数、肝機能の状態などに応じて、ラジオ波熱凝固療法(RFA)などと組み合わせて行われることもあります。  手術は、肝臓を直接みて、超音波(エコー)を使いながら行うため、手術前の検査ではわからなかった肝細胞がんも治療することができ、さらに、今ある肝細胞がんだけでなく、今はみつけられないほど小さな肝細胞がんが転移している可能性のある領域を切除することができるため、もっとも効果の高い(根治的)治療法であるといわれています。  また、腹腔鏡を用いることで、お腹の切る範囲を小さくし、身体的負担を軽減する方法が用いられることもあります。


手術(肝切除)


 [穿刺]局所療法は、一般に超音波(エコー)で肝細胞がんの位置を確認しながら、開腹せずにお腹の皮膚から肝細胞がんまでとどく少し長い針をさして、熱や薬で肝細胞がんを壊死させる治療法です。
 肝細胞がんの位置確認にCTや腹腔鏡を用いたり、手術中に行うこともあります。
 [穿刺]局所療法には、ラジオ波熱凝固療法(RFA)、マイクロ波熱凝固療法(MCT)、エタノール注入療法(PEIT)などがあり、開腹せずに行うことができるため身体的負担を少なくできます。
 近年、もっとも汎用されているラジオ波熱凝固療法(RFA)は、小さな肝細胞がんに対して効果の高い治療法であるといわれています。
 また、少し大きな肝細胞がんに対して行う場合には、肝動脈塞栓療法(TACE)と組み合わせて行われることがあります。

ラジオ波熱凝固療法(RFA)
 電極針を肝細胞がんにさし、ラジオ波を照射して肝細胞がんを焼く治療法です。手術中に肝切除と組み合わせて行われることもありますが、図のようにお腹の皮膚の上から超音波(エコー)で肝細胞がんの位置を確認して行うことができます。
[穿刺]局所療法の中では、もっとも効果が高いといわれています。


[穿刺]局所療法


 肝動脈塞栓療法(TACE)は、肝細胞がんに血液を送り増殖するために必要な栄養を与えている血管(栄養血管)を詰物(塞栓物質)で遮断する治療法です。
 肝動脈塞栓療法(TACE)では、X線検査を受けながら、カテーテルとよばれる細い管を足の付け根から動脈に挿入し、肝細胞がんのそばまでカテーテルを到達させてから、抗がん剤や油性の造影剤と一緒に塞栓物質を栄養血管の中に流し込みます
そのほか、抗癌剤を吸着させた球状の塞栓物質(薬剤溶出性ビーズ)を用いることもあります。
 肝細胞がんは、血液の遮断による効果と抗がん剤による効果によって壊死します。

肝動脈塞栓療法(TACE)


  肝動注化学療法(TAI)は、動脈の中にカテーテルとよばれる細い管を通し、抗がん剤を肝細胞がんの近くから流し込む治療法です。
 抗がん剤を繰り返し投与できるように"ポート"とよばれる器具をお腹や胸の皮下に埋め込み、そこから抗がん剤をカテーテルに注入することもあります(HAIC)。
 肝細胞がんが多発していて、[穿刺]局所療法の対象とならない場合などに行われます。

 肝細胞がんに放射線を照射して壊死させる治療法です。  肝臓にある肝細胞がんに行われることは少なく、肝臓の外(骨や脳)に転移してしまった肝細胞がんに対して行われます。

  肝臓の機能は比較的良い状態であるのに、手術(肝切除)や[穿刺]局所療法の対象とならない大きな肝細胞がんや多発した肝細胞がんで、肝動脈塞栓療法などでは治療効果が十分に得られない場合や肝臓以外にも転移してしまった場合などに分子標的治療薬などの抗がん剤が用いられます。  分子標的治療薬は、肝細胞がんに直接作用して増殖を抑制する効果と肝細胞がんに栄養を与える血管に作用して肝細胞がんの増殖を抑制する効果があります。ただし、副作用が発現することがあるので、担当の先生の指示を守って服用しなければなりません。

化学療法

肝細胞がん治療後の検査の重要性

 肝細胞がんを治療した後に、再び肝細胞がんが発見されること(再発)があります。肝細胞がんの年間再発率は15~20%、5年で80%に達するといわれており2)、肝細胞がんが再発する患者さんは少なくありません 。
 そのため、再発を早く発見し、効果の高い治療を受ける機会を逸しないためには、定期的な検査が重要です。
 担当の先生は、患者さんの状態に応じて検査の種類や検査間隔を考えてくれます。先生の指示に従って、特に異変を感じていなくても、検査や診察を受けましょう。


肝細胞がん治療後の検査の重要性
肝細胞がん治療後の検査の重要性

肝細胞がんをみつけるための検査

 肝細胞がんは、肝臓の組織とは異なる特徴をもっています。
早期の小さな肝細胞がんは一部の特徴しか示しませんが、大きくなるとほとんどの特徴を示すようになります。
 肝細胞がんの再発をみつけるために、肝細胞がんの特徴があらわれていなかどうかを血液や画像を用いて検査します。

肝細胞がんの主な特徴
血液検査と画像を用いる検査の種類

 採血した血液中の腫瘍マーカーとよばれるAFP、AFP-L3、PIVKA-Ⅱの値を測定します。腫瘍マーカーは肝細胞がんが発生すると増加する物質です。
 しかしながら、AFPの値は慢性肝炎や肝硬変でも高い値を示すことがあり、AFP-L3やPIVKA-Ⅱでも他の要因で高い値を示すことがあります。
 また、肝細胞がんが再発していても腫瘍マーカーの値が高くなるとはかぎりません。少しでも肝細胞がんをみつける確率(感度)を高くするために、通常、複数の腫瘍マーカーを測定します。
 腫瘍マーカーの値が高ければ、肝細胞がんが再発している可能性が高いと考えられますが、どこにあるかはわからないため、定期的に画像を用いる検査(超音波検査、CT検査、MRI検査)を併用する必要があります。


血液検査

  プローブとよばれる器具を直接お腹の皮膚にあてて肝臓にあたって跳ね返ってくる超音波(エコー)を画像にします。静脈から超音波用造影剤を投与して検査を行う場合もあります。
 放射線被曝がなく簡便に行えることが利点ですが、超音波(エコー)が届かず、みえにくい場所(死角)があることや超音波検査装置や操作する人の技術が影響することなどが欠点です。
また、肝細胞がんを治療した際に肝臓に生じた傷が診断の妨げになることもあり、CT検査やMRI検査と組み合わせて再発の有無を確認する必要があります。


超音波検査
超音波画像


  放射線(X線)を使って、肝臓の断面像を得る検査です。
 通常、CT検査用の造影剤を静脈から投与して検査を行います。
造影剤を投与すると、栄養血管が発達して血流が増えている肝細胞がんは、たくさんの造影剤が血流にのって流れ込むため周りの肝臓よりも白く描出され、その後、造影剤は流れでて周囲の肝臓よりも黒く描出されます。
 CT検査は、比較的短時間で行うことができ、超音波検査のようなみえにくい場所(死角)がないことが利点です。一方、放射線被曝があること、血流が増えていない肝細胞がんの発見が難しいこと、造影剤の禁忌に相当する患者さん(造影剤アレルギーや腎不全など)には実施できないことなどが欠点です


CT検査
CT画像


   電磁波を用いて断面像を得る検査です。MRI装置は、CT装置を少し大きくしたような形をしていますが、検査時間はCTより長くかかります。
 通常、MRI検査用の造影剤を静脈から投与して検査を行います。
 MRI検査用の造影剤には、肝細胞などに特異性のある造影剤と特異性のない造影剤があります。
 造影剤を投与すると、血流が増えている多血性肝細胞がんは、たくさんの造影剤が流れ込み、周りの肝臓よりも白く描出されます。その後、造影剤は肝細胞がんから流れでて肝細胞がんは周囲より黒く描出されます。さらに時間が経つと肝細胞に特異性のある造影剤では肝細胞の中に入り肝臓が白く造影されるため、肝細胞がんはいっそう黒く描出され発見しやすくなります。


MRI検査


  各検査の主な長所と短所を比較すると以下の表のようになります。


各検査の特徴比較

   画像を用いる検査でみつかった病変の多くは、画像にあらわれる特徴によって肝細胞がんであるかどうかがわかります。
 しかし、これらの画像だけでは肝細胞がんかどうかを判定しにくい場合があり、カテーテルを用いて動脈に造影剤を投与し、肝臓内の血管をより明瞭に描出する検査(血管造影検査)やお腹の皮膚から病変に針をさし病変の組織(細胞)を直接採取して、肝細胞がんであるかどうかを判定(針生検)することがあります。


**引用書籍**

1)日本肝癌研究会編. 第19回全国原発性肝癌追跡調査報告(2006~2007):2014
2)日本肝臓学会編. 肝癌診療マニュアル第2版:医学書院;2010
3)日本肝癌研究会編. 臨床・病理原発性肝癌取り扱い規約2009年6月(第5版補訂版):金原出版;2009
4)日本肝臓学会編. 科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン2013年版:金原出版;2013



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